2025.11.06

ジムの利用料を経費として計上したいと考える経営者や個人事業主の方は多いのではないでしょうか。健康管理は仕事のパフォーマンスにも影響するため、できれば事業経費として処理したいところです。
しかし、ジムの利用料を経費として計上するには、個人事業主と法人で異なる条件があり、適切な処理をしなければ税務調査で指摘を受ける可能性があります。
本記事では、ジムの利用料を経費計上するための条件や注意点、具体的な処理方法について詳しく解説します。
※本記事は一般的な制度説明です。具体的な適用可否・必要書類は税務署や税理士など専門家へ確認してください。制度や運用は変更される場合があります。必ず最新の公式情報をご確認ください。
目次
ジムの利用料を経費として計上するためには、事業との直接的な関連性を証明する必要があります。国税庁によると、個人事業主の必要経費は「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用」と「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用」に限られます。
事業に直接関係する例として、スポーツトレーナーやフィットネス指導など業務の一部として身体づくりが不可欠な業種では、実態と記録により事業関連性を説明できる支出は経費として認められる余地があります(職種名の列挙による一律の可否基準は公表されていません)。
個人事業主がジムの利用料を経費計上することは、現実的には難しいとされています。その理由は、個人事業主本人は福利厚生を提供する側であり、受ける側ではないためです。
国税庁の見解では、「家事上の費用は必要経費となりませんが、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」とされています。
仮に事業との関連性を主張する場合でも、プライベートでの利用と事業での利用を明確に区分することが求められます。この場合、利用時間や利用目的を記録し、事業で使用した割合を合理的に算出して按分計算を行う必要があります。
税務調査では、経費として認められるかどうかの立証責任は納税者側にあります。事業との直接的な関連性を示す資料や記録を準備しておくことが重要です。
従業員の慰安・健康増進のための費用で、おおむね一律に供与される通常の範囲のものは、交際費等から除外され福利厚生費などに区分されます。ジム費用を福利厚生として扱う場合も、従業員向けに広く提供されている実態が重要です。
参考:国税庁「No.5261 交際費等と福利厚生費との区分」
ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。
| 項目 | 法人での取り扱い | 注意点 |
| 契約形態 | 明文規定はないが、法人契約・法人会員として利用するのが実務上安全 | 個人会員の会費を会社が負担すると給与課税とされる取扱いがあるため注意(※) |
| 利用対象 | 従業員におおむね一律に供与されることが前提 | 役員や特定の人だけだと福利厚生費ではなく給与課税や交際費等と判断される可能性あり |
| 利用実績 | 明確な人数要件はない | 特定者のみの利用実態だと福利厚生性が弱まり、経費否認リスクが高まる |
| 規程整備 | 就業規則や社内規程に記載して制度化するのが望ましい | 名目だけでは足りず、実態が福利厚生として従業員全体に供与されているかが重視される |
※ 個人名義の会費を会社が負担する場合は“給与等に係る経済的利益”として課税対象、法人名義かつおおむね一律供与なら福利厚生費の射程という整理に基づきます。
スポーツ関連業やフィットネス業界に従事する人(スポーツトレーナー、フィットネスインストラクター、ヨガインストラクターなど)の場合、ジムの利用は業務との関連性を説明しやすい支出といえます。たとえば、最新のトレーニング方法を学ぶ、競合他社のサービスを研究する、自身の指導技術を高めるといった目的があれば、業務上必要な費用として経費に算入できる可能性があります。
ただし、この場合でも国税庁が定めるとおり「業務遂行上直接必要であったことが記録などにより明確に区分できる」ことが前提です。利用目的や頻度、成果などを記録しておくことが、経費性を立証するうえで重要になります。
モデルや俳優、タレントといった職業では、体型維持や身体づくりが仕事と密接に関わる場合があり、そのようなケースではジムの利用料を経費として計上できる余地があります。たとえば、特定の役作りのために体重を増減させる必要がある場合や、アクション作品の撮影に備えて体力を高める必要がある場合など、仕事との直接的な関連性を説明できれば、経費として認められる可能性があります。
一方で、一般的な健康維持や体力向上を目的とした利用は原則として経費にはなりません。したがって、出演作品の契約書や役柄に関する資料など、具体的に業務と結び付けられる証拠を保管しておくことが重要です。
一般的な業種の場合、個人事業主がジムの利用料を経費計上することは困難です。営業職での健康管理や経営者の体力維持といった目的では、事業との直接的な関連性を証明することが難しいためです。
法人の場合は、福利厚生制度として導入することで経費計上が可能になります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、健康づくりにおいて以下を推奨しています。従業員の健康増進は企業にとってのメリットにつながることもあります。
参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
接待目的でゴルフと同様にジムを利用する場合、交際費として計上できる可能性もありますが、実際にビジネスの商談や関係構築に使用していることを証明する必要があります。
ジムの利用料を経費計上する際の勘定科目は、利用目的によって異なります。
法人が従業員の福利厚生として導入する場合に使用します。国税庁は、従業員等に「おおむね一律」に提供される費用を福利厚生費として認めています。
参考:国税庁「No.5261 交際費等と福利厚生費との区分」
スポーツトレーナーなどが技術向上のために利用する場合、研修費として計上することがあります。業務に直接必要な技能習得が目的である必要があります。
取引先との関係構築のために一緒にジムを利用する場合、交際費として計上できる可能性があります。中小法人の場合、交際費等については「年800万円までの範囲で全額損金算入」または「接待飲食費の50%損金算入」のいずれかを選択適用できます(事業年度の月数で按分)。
※令和6年度改正で、交際費等から除外される“一定の飲食費”の金額基準が「1人あたり10,000円以下」に引上げ、また中小法人の800万円特例・接待飲食費50%特例の適用期限が3年延長されています。
上記のいずれにも該当しない場合で、事業との関連性が認められる場合は、雑費として処理することもあります。
経費計上するためには、適切な証憑書類の保管が必須です。
必要な書類として、以下のものを保管しておく必要があります:
これらの書類は、原則として法人税法により7年間(※欠損金の繰越控除の適用がある事業年度は10年間)保存する必要があります。
起算日は確定申告書の提出期限の翌日です。
また、電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
※「利用実績の記録(誰がいつ利用したか)」については、法定保存文書ではありませんが、福利厚生の実態を説明する資料として保存を強く推奨します(特定の役員・従業員のみの利用とならないことの証跡が重要)。
税務調査では、これらの書類をもとに、制度が従業員におおむね一律に提供され、実際に利用されていることを説明する必要があるため、契約書・規程・利用記録・支払証憑を体系的に整理して保管してください。
税務調査で経費の妥当性を問われた際に備えて、以下の書類を準備しておくことが重要です。
事業用とプライベート用の利用を明確に区分することは、経費計上の重要なポイントです。
ジムの利用時間を詳細に記録し、事業用として利用した時間とプライベートで利用した時間を明確に分けます。タイムカードやアプリの利用履歴などを活用して、客観的な記録を残すことが重要です。
国税庁は「家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています。
事業用の利用割合を算出する際は、合理的な根拠が必要です。例えば、週5日利用のうち3日が事業用であれば60%を経費計上するなど、明確な計算根拠を示せるようにしておきます。
法人契約の場合、会社が直接ジムと契約を結ぶため、福利厚生費としての性格が明確になります。一方、個人契約では、たとえ会社が費用を負担しても、給与として課税される可能性があります。
国税庁は「役員や使用人に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得」を給与所得としており、個人契約のジム代を会社が負担した場合、これに該当する可能性があります。
役員や従業員の家族がジムを利用する場合、その費用の取り扱いには注意が必要です。家族の利用分まで会社が負担すると、役員や従業員への給与とみなされる可能性があります。
| 契約形態 | メリット | デメリット | 注意点 |
| 法人契約 | 福利厚生費として処理可能 | 利用者が限定される場合あり | 全従業員対象の制度設計が必要 |
| 個人契約 | 柔軟な利用が可能 | 経費計上が困難 | 給与課税のリスクあり |
| 家族利用あり | 従業員満足度の向上 | 給与課税の可能性 | 本人負担分の設定が必要 |
A: 法人が福利厚生として契約している場合で、全従業員が利用可能な制度であれば、原則として全額経費計上が可能です。ただし、実際の利用実績が代表者のみに偏っている場合は、税務調査で否認される可能性があります。
個人事業主の場合、事業との直接的な関連性を証明することが難しいため、全額経費計上は困難です。事業で使用する割合を合理的に算出し、按分計算を行う必要がありますが、実務上認められるケースは少ないのが現状です。
A: パーソナルトレーニング費用は、通常のジム会費よりも高額になるため、より慎重な判断が必要です。法人の場合でも、特定の役員や従業員のみが利用している場合は、給与として課税される可能性があります。
スポーツトレーナーなど、業務に直接必要な職種の場合は、研修費として計上できる可能性もありますが、その場合も業務との関連性を明確に説明できる資料を準備しておく必要があります。
A: 従業員の家族がジムを利用する場合、その費用を会社が負担すると、従業員への給与とみなされる可能性があります。家族利用を認める場合は、家族分の利用料は従業員本人が負担する、または給与から天引きするなどの処理が必要です。福利厚生制度として家族利用を認める場合でも、社会通念上妥当な範囲を超えないよう注意が必要です。
A: 出張先でのジム利用料については、ケースバイケースでの判断となります。原則としてジム料金は私的性格が強く、出張中であっても経費性は限定的です。
ただし、業務の遂行上“直接必要”であることが客観資料で示せる場合(例:運動指導や実技評価を伴う研修・撮影等に付随し、当該施設利用が不可欠)、旅費規程等と併せて個別判断の余地があります。単なる健康維持目的は否認リスクが高い点に留意してください。
ジムの利用料を経費として計上するには、個人事業主と法人で大きく条件が異なります。個人事業主の場合、国税庁の定める「業務遂行上直接必要」という要件を満たすことが難しく、実務上は経費計上が困難なケースが多いのが現状です。一方、法人の場合は、適切な福利厚生制度として設計すれば、経費計上が可能です。
重要なポイントは、全従業員が平等に利用できる制度設計、法人名義での契約、利用実績の記録と保管です。これらの条件を満たし、適切な運用を行うことで、税務調査でも問題なく経費として認められます。
ジムの利用料を経費計上する際は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。業種や事業規模、利用目的によって判断が異なるため、個別の状況に応じた適切なアドバイスを受けることが重要です。正しい知識と適切な処理により、健全な経営と従業員の健康増進の両立を目指しましょう。
※本記事は一般的な制度説明です。具体的な適用可否・必要書類は税務署や税理士など専門家へ確認してください。制度や運用は変更される場合があります。必ず最新の公式情報をご確認ください。
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