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ジム通いは医療費控除の対象になる?条件と申請方法

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健康維持や生活習慣病の改善のためにジムに通っている方は多いでしょう。実は、一定の条件を満たせばジム利用料が医療費控除の対象となる場合があります。医療費控除は、年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得の5%)を超えた場合に、確定申告により所得税の一部が還付されたり、住民税が減額されたりする制度です。

本記事では、どのような条件でジム費用が医療費控除の対象となるのか、申請方法や必要書類について詳しく解説します。健康づくりと節税の両立を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事は一般的な制度説明です。具体的な適用可否・必要書類は税務署や税理士など専門家へ確認してください。制度や運用は変更される場合があります。必ず最新の公式情報をご確認ください。

ジム費用が医療費控除の対象になる基本条件

医療費控除制度の概要

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分や生計を共にする家族のために支払った医療費が一定額を超える場合、その医療費の額を基に計算される金額を所得から控除できる制度です。

医療費控除を受けるためには、原則として年間の医療費が10万円を超える必要があります。ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%を超えた分が控除対象となります。控除額は以下の計算式で求められます。

医療費控除額=(支払った医療費の総額-保険金などで補填される金額)-10万円

控除を申請するには、翌年の2月16日から3月15日までの期間に確定申告を行う必要があります。申請時には、医療費の領収書や明細書などの書類を準備しておく必要があります。なお、これらの書類は提出する必要はありませんが、5年間の保管義務があります。

ジム費用が認められる具体的な条件

厚生労働省では、国民の健康づくりを推進する上で適切な内容の施設を認定しその普及を図るため「健康増進施設認定規程」を策定しています。一般的な健康増進や予防目的でのジム利用は医療費控除の対象外ですが、以下の条件をすべて満たす場合に限り、ジム利用料が医療費控除の対象となります。

1. 医師の運動療法処方箋があること

高血圧症、脂質異常症、糖尿病、虚血性心疾患などの生活習慣病があり、医師が運動療法の必要性を認めた場合に、運動療法処方箋が発行されます。この処方箋に基づく運動が医療費控除の対象となります。

2. 厚生労働省指定の施設であること

運動型健康増進施設のうち、一定の条件を満たす施設は指定運動療法施設とされ、医師の指示に従って運動療法を行った場合にかかった利用料金が医療費控除の対象となります。すべてのジムが対象ではなく、厚生労働省が認定した「指定運動療法施設」のみが該当します。

3. 週1回以上、8週間以上の継続利用

施設での運動は、概ね「週1回以上」を「8週間以上」継続して行うことが求められます。これは、運動療法として一定期間の継続的な取り組みが必要であるという医学的な観点に基づいています。

4. 料金設定の要件

1回の利用料金が1万円(税込)以内であること。

5. 医療機関連携・担当医の要件

提携業務担当医は日本医師会の「健康スポーツ医」認定、健康スポーツ医学講習会の修了、または都道府県医師会長の証明(同等以上の知見)のいずれかを満たすこと。

6. 施設・指導体制

指定施設側は、健康運動指導士・健康運動実践指導者等による指導体制、主治医/提携医による経過観察等が求められます。必要に応じた証明書の発行などの責務を負います。

指定運動療法施設の認定基準と最新状況

指定運動療法施設の主な認定基準は、厚生労働大臣認定健康増進施設であること、提携医療機関担当医が日本医師会認定健康スポーツ医など「医療機関連携・担当医の要件」を満たすこと、運動療法の実施にかかる料金体系を設定してあることなどです。

2022年4月には重要な制度改正が行われ、医療費控除の対象となる1回あたりの利用料金の上限が、従来の5,000円から10,000円に引き上げられました。この改正により、より多くの施設が指定運動療法施設として参入しやすくなり、利用者にとっても選択肢が広がりました。

指定運動療法施設として認定されるためには、トレーニングジム、運動フロア、プールなどの適切な運動設備を有し、運動指導を行う専門スタッフが常時配置されている必要があります。また、医療機関との連携体制が整備されていることも重要な条件となります。2023年3月には、24時間営業のフィットネス施設等の認定基準が明確化され、健康増進施設として営業する時間帯において運動指導を行う者を常時配置することなどの要件が示されました。

参考:厚生労働省「健康増進施設認定制度」

2025年10月現在、全国の運動型健康増進施設は約380施設、そのうち指定運動療法施設は約280施設です。この数は年々増加傾向にあります。地域によって施設数には差があるため、お住まいの地域に指定施設があるか確認することが重要です。

医療費控除として認められる運動療法の実施方法

生活習慣病の改善を目的とした運動療法

生活習慣病の運動療法として医療費控除が認められるのは、主に以下の疾患に対する治療の一環として行われる場合です。

対象疾患運動療法の内容例
糖尿病有酸素運動による血糖値コントロール
高血圧症適度な強度の有酸素運動
脂質異常症有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせ
虚血性心疾患医師の管理下での段階的な運動プログラム


医師の運動処方箋には、運動の種類、強度、頻度、時間などが具体的に記載されます。施設では、この処方箋に基づいて個別の運動プログラムが作成され、専門スタッフの指導のもとで実施されます。

運動療法の実施にあたっては、定期的な医師の診察を受け、運動の効果や体調の変化を確認しながら進めることが重要です。医師と施設が連携して、安全で効果的な運動療法を提供する体制が整っていることが、医療費控除の対象となる条件の一つとなっています。

リハビリテーション目的での利用

医療費控除の対象となる運動療法は、高血圧症・脂質異常症・糖尿病・虚血性心疾患など、医師が運動療法を必要と判断した疾病が中心です。一般的なリハビリ目的でのジム利用が一律に対象となるわけではありません。

リハビリテーション目的での利用では、医療機関での治療と並行して、または治療後の機能回復・維持を目的として運動療法を行います。この場合も、医師の指示書や処方箋が必要となり、医療機関と施設が密接に連携して進められます。

ただし、リハビリテーション目的であっても、医師の処方箋なしに自己判断で行う運動や、指定施設以外での運動は医療費控除の対象外となるため注意が必要です。

医療費控除の対象にならないケース

予防や健康維持目的の利用

健康な方が病気の予防や体力向上を目的としてジムを利用する場合は、医療費控除の対象となりません。たとえ健康診断で軽度の異常が見つかっても、医師による運動療法の処方箋がなければ対象外です。

美容やダイエットを主目的とした施設利用も、治療ではなく健康増進の範疇に入るため、医療費控除の対象外となります。また、ストレス解消やリフレッシュを目的とした利用も同様に対象外です。

国税庁によると、特定保健指導において定期的に運動をすべきとの指導を受けてスポーツジムに通った場合でも、運動施設の利用料は医療費控除の対象となる医療費には該当しません。これは、運動施設の利用料が特定保健指導そのものの対価ではなく、医師の診療等を受けるために直接必要な費用にも該当しないためです。

自己判断での利用

医師の診断や処方箋なしに、自己判断でジムに通い始めた場合は、たとえ生活習慣病があっても医療費控除の対象にはなりません。医療費控除を受けるためには、必ず事前に医師の診察を受け、運動療法の必要性について医学的な判断を得る必要があります。

また、医師から運動を勧められても、正式な運動療法処方箋が発行されていない場合や、口頭での指示のみの場合は医療費控除の対象外となります。控除を受けるためには、書面による処方箋が必須です。

指定施設以外での利用

厚生労働省の指定を受けていない一般のフィットネスクラブやスポーツジムの利用料は、たとえ医師の処方箋があっても医療費控除の対象となりません。同じ企業が運営する系列ジムであっても、店舗ごとに指定の有無が異なるため、利用前に必ず確認が必要です。

パーソナルトレーニングジムやヨガスタジオ、格闘技ジムなど、運動型健康増進施設の認定を受けていない施設での費用も対象外となります。

医療費控除を申請する際の手続き

必要書類の準備

医療費控除を申請するためには、以下の書類を準備する必要があります。

必要書類内容・注意事項
運動療法処方箋医師が発行する運動療法の指示書
運動療法実施証明書施設での運動実施を証明する書類
施設利用料の領収書支払った金額と日付が明記されたもの
医療費控除の明細書確定申告時に作成・提出
確定申告書所得税の申告書類


施設は所定の運動療法実施証明書(税務署提出用)を発行します。発行時期は「8週間終了直後」に限定されず、年度をまたぐ場合の取扱いも認められています。この証明書を主治医に提出し、署名をもらう必要があります。領収書は月ごとや利用ごとに発行されるため、すべてを大切に保管しておきましょう。

確定申告での申請方法

医療費控除を受けるには、翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間中に申告を行います。申請は税務署の窓口、郵送、またはe-Taxによるオンライン申請が可能です。

申告時には、医療費控除の明細書に運動療法にかかった費用を記載し、確定申告書と一緒に提出します。医療費控除の明細書には、施設名、支払先の所在地、支払った金額、医療費の区分などを記入します。

e-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードとICカードリーダー、またはマイナンバーカード対応のスマートフォンが必要です。オンライン申請は24時間受付可能で、還付金の振り込みも早いというメリットがあります。

申請時の注意点

  • 領収書の保管期間

運動療法実施証明書や領収書は提出する必要はありませんが、確定申告の期限から5年間は自宅等で保管する義務があります。税務署から提示を求められた場合に備えて、整理して保管しておきましょう。

  • 税務署からの問い合わせへの対応

申請内容について税務署から確認の連絡が入る場合があります。運動療法の必要性や実施状況について説明できるよう、医師の診断書や処方箋のコピーも保管しておくことをおすすめします。

  • 控除が認められなかった場合

書類の不備や条件を満たしていないことが判明した場合、控除が認められないことがあります。その場合は、不足書類の提出や修正申告が必要になることもあります。事前に税務署や税理士に相談することで、このようなトラブルを避けることができます。

よくある質問

Q1: パーソナルトレーニング費用は対象になりますか?

パーソナルトレーニングの費用が医療費控除の対象となるかは、施設が厚生労働省の指定運動療法施設であるかどうかによります。指定施設内で提供されるパーソナルトレーニングで、医師の処方箋に基づく運動療法の一環として実施される場合は対象となる可能性があります。ただし、一般的なパーソナルトレーニングジムは指定施設ではないことが多いため、事前に確認が必要です。

Q2: 家族のジム費用も合算できますか?

生計を共にする家族が医師の処方箋に基づいて指定運動療法施設を利用した場合、その費用も医療費控除の対象として合算できます。ただし、家族それぞれが医師の診察を受け、個別に運動療法処方箋を取得している必要があります。配偶者や扶養家族の医療費は、納税者がまとめて申告することができます。

Q3: 会社の健康保険組合の補助がある場合はどうなりますか?

健康保険組合から運動施設利用に対する補助金や還付金を受けた場合、その金額は医療費から差し引く必要があります。例えば、年間24万円の施設利用料を支払い、健康保険組合から5万円の補助を受けた場合、医療費控除の計算対象となるのは19万円となります。補助金の有無や金額は、申告前に必ず確認しておきましょう。

Q4: スポーツクラブの年会費は全額対象になりますか?

指定運動療法施設の年会費であっても、医療費控除の対象となるのは実際に運動療法を実施した期間の費用のみです。例えば、年会費12万円を支払っても、実際に運動療法を行ったのが3か月間だけの場合は、その3か月分に相当する金額のみが控除対象となります。また、運動療法の実施にかかる料金は1回当たり1万円以内(税込)という上限があるため、この範囲内での申請となります。

まとめ

ジム費用が医療費控除の対象となるためには、医師の運動療法処方箋があること、厚生労働省指定の運動療法施設を利用すること、週1回以上8週間以上継続することという3つの条件をすべて満たす必要があります。一般的な健康増進や予防目的でのジム利用は対象外となるため、注意が必要です。

全国の運動型健康増進施設のうち、指定運動療法施設は厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。お住まいの地域に指定施設があるか確認してみましょう。

医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。運動療法実施証明書や領収書などの必要書類を準備し、適切に申請手続きを行いましょう。申請前に不明な点がある場合は、主治医や税務署、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。健康づくりと節税を両立させるためにも、制度を正しく理解し、適切に活用していきましょう。

 

※本記事は一般的な制度説明です。具体的な適用可否・必要書類は税務署や税理士など専門家へ確認してください。制度や運用は変更される場合があります。必ず最新の公式情報をご確認ください。

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