知っておきたい健康のこと

健康寿命を伸ばす秘密は、筋肉にあった!?

近頃、よく耳にする「健康寿命」という言葉。
平均寿命とはどう違うのでしょう?
また「健康寿命を延ばすことが大切」ともよくいわれますが、どうすれば延ばせるのでしょう?
整形外科医としてクリニックを開業されているだけでなく、腰痛・膝痛治療の科学的な研究を進められている『久我山整形外科ペインクリニック』の佐々木政幸院長に、シニアのカラダと健康に関するお話を伺いました。

久我山整形外科ペインクリニック 

佐々木 政幸先生

佐々木 政幸先生

「健康寿命」とは、
「平均寿命-(マイナス)要介護期間」とご理解ください。

健康寿命」とは、「平均寿命-(マイナス)要介護期間」とご理解ください。

男性の平均が約72歳、女性の平均が約74歳。これが日本の健康寿命です。結構短く感じませんか?「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間のこと。平均寿命から寝たきりや認知症などの要介護状態の期間を差し引いた年数のことです。

この平均寿命と健康寿命の差、介護や人の助けが必要な期間が現在、男性は約8年、女性は12年ほどあります。この年数をどう縮めていくかが医療関係者、介護関係者の課題だといえますし、みなさんにとっては、いかに健康なままで年齢を重ねるかが重要なポイントになります。

健康寿命」とは、「平均寿命-(マイナス)要介護期間」とご理解ください。

要介護状態になる危険因子が、
「ロコモ」「サルコペニア」「フレイル」なんです。 要介護状態になる危険因子が、「ロコモ」「サルコペニア」「フレイル」なんです。

「運動器」ってご存じですか? 人がカラダを自由に動かせるのは、骨や関節、筋肉、神経などで構成された、この「運動器」の働きによるものです。運動器の障害で、歩行などの移動機能が低下してしまう状態を「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」といいます。略称で「ロコモ」と呼ばれることが多いです。たとえば、骨であれば骨粗しょう症、軟骨であれば変形性関節症などがロコモにあたります。そのなかで筋肉量が減ってしまう疾患がありますが、これが「サルコペニア(筋肉減少症)」です。歩くスピードが落ちてしまうなど、やはり運動機能の低下が見られます。

加齢による機能の低下や活動の低下が、カラダだけではなく、抑うつ状態や認知機能の低下など精神面にまで及んでしまう状態が「フレイル」です。こうした肉体的、精神的な虚弱状態に加え、家に引きこもってしまうなど社会的に孤独になってしまう状態も、「フレイル」であるといわれています。

「ロコモ」も「サルコペニア」も「フレイル」も、ある意味、寝たきりや要介護状態の一歩手前だといえるでしょう。健康寿命の延伸にブレーキをかけてしまう危険因子に他なりません。

要介護状態になる危険因子が、「ロコモ」「サルコペニア」「フレイル」なんです。
要介護状態になる危険因子が、「ロコモ」「サルコペニア」「フレイル」なんです。

膝痛や腰痛は、筋力低下の原因。
転倒から寝たきりになるリスクも上昇。

サルコペニアは筋肉減少症という疾患ですけど、そこまでに至らなくても年を重ねると自然と筋肉量は落ちていきます。運動量や筋肉にかかる負荷も低下していきますからね。筋肉というのは常に刺激を与えてあげていれば、それなりに維持ができるものなんです。ところが、膝痛や腰痛などカラダに痛みがあるとか、体調が悪いなどの理由で刺激を与えることができなくなると、筋肉も減っていきます。

膝痛や腰痛は、筋力低下の原因。転倒から寝たきりになるリスクも上昇。

筋肉が減ってしまい、筋力が衰えてくると、つまずきや転倒によって骨折してしまうリスクも高まります。同じ転ぶにしても筋力がある人は大ケガまでには至らないことが多いです。反対に、家の中にいて布団や電気のコードにつまずいて転んでしまう。ただそれだけで骨折して寝たきりになり、認知症にまでなってしまい亡くなってしまう。そんな方もいらっしゃるわけです。

膝痛や腰痛は、筋力低下の原因。転倒から寝たきりになるリスクも上昇。

どうせ減っていくものであれば…。
筋肉の”貯金”を考えておく!?

筋肉はある程度のボリュームがないと衰えていくことが多いです。もちろん筋肉だけではなく、骨密度も低くなります。関節も変形してきます。軟骨もなくなって固まってきます。まさに右肩下がりの状態になっていくんですね、もちろん人によって下がり方は違いますが。

そういう意味では、おカネと同じ発想をしていただければいいのかなと思います。若い頃、40代くらいから、遅くとも50代、60代ぐらいまでに”貯金”をするつもりでカラダを鍛えておく。たしかに筋肉量や骨密度などの数字はどれもが落ちてきますが、鍛えている人であればその落ち幅は少なくなります。みなさんのカラダに関しては、”貯金”はできても”年金”にあたるものはないんです。

実は、年をとっても筋肉量は増やせます!さあ、50代、60代からトレーニングを!

50代、60代のシニアで、「これから、筋肉の”貯金”なんてできるの?」と思われている方も結構いらっしゃるはず。実は、年をとっても筋肉はつけられます。というのも、筋肉というのは繊維でその数が決まっています。筋肉をつける、筋肉量を増やすというのは、繊維の数を増やすことではなく、その繊維の一本一本を太くするということなんですね。

鍛えること、トレーニングなどで負荷をかけることによって、筋肉という繊維は太くなります。理論的にはかなりの高齢の方でも筋肉はつくといわれています。あきらめる必要はまったくありません。

実は、年をとっても筋肉量は増やせます!さあ、50代、60代からトレーニングを!

筋肉に加えて、柔軟性もあれば、
若い頃の姿勢をそのまま保てます。

筋肉を鍛えるメリットは、ロコモやフレイルを防ぐばかりではありません。50代、60代のシニアの方ですでに、背中が丸くなってきた、猫背になってきたという自覚を持たれている方はいらっしゃいませんか?若い頃の姿勢を維持するのも筋肉なのです。

筋肉に加えて、柔軟性もあれば、若い頃の姿勢をそのまま保てます。

87歳、俳優の大村崑さんもトレーニングの結果、
軽々と階段を上がれるまでになりました。

ただし、姿勢に関しては筋肉だけの問題ではなく、背骨や関節なども大きな影響があります。トレーニングにおいては、筋肉を鍛えることに加えて、ぜひ柔軟性が増すような運動も行っておきたいものです

筋肉に加えて、柔軟性もあれば、若い頃の姿勢をそのまま保てます。

87歳、俳優の大村崑さんもトレーニングの結果、
軽々と階段を上がれるまでになりました。

トレーニングの際に、気をつけて
いただきたいことがあります。

50代や60代の方にトレーニングを習慣化していただく際、注意すべきする点もあります。それは、絶対に無理をしないこと。実は、頑張りすぎてケガをしてしまうシニアの方も結構多いのです。そのためにも自己流のトレーニングはできるだけ避けていただきたいですね。

それと、筋肉はつけても肥満にはならないこと。筋肉が痩せることが問題だから体重が増えてもいいという話でもないのです。たとえば、太ると膝にも悪影響があります。膝は普通に歩くときに体重の3倍ぐらいの負担がかかります。階段の上り下りだと、下りの方の負担が大きく、普通に歩くときの倍、つまりは体重の6倍の負担がかかります。腰も同様、前かがみになれば体重の1.5倍くらいの負担が、また常に股関節にも体重の3倍の負担がかかっています。基本は痩せたほうが関節にやさしいんです。だから、そこに筋力がついていれば理想的なんです。筋力があれば関節への負担を減らすことができますので。

食事やメンタルのことまで考えると、
手厚いサポートが必要です! 食事やメンタルのことまで考えると、手厚いサポートが必要です!

シニアの方が筋肉をつけるには、トレーニングに加えて食事も重要です。肉などのたんぱく質をしっかり摂ることは基本。ただ食事に関しては、私たち整形外科医をはじめ、医療関係者の全員が全員、きちんと食事指導のできる知識を持ち合わせているというわけではありません。

また、フレイルのところでも話しましたが、孤独という問題がありました。何かと家に閉じこもりがちになりやすいシニアの日常、コミュニケーションをとれる人とトレーニングができたら効果も出やすいのではないかと思います。

そういう意味では、やはり科学的にしっかりした方法をおすすめしたいですね。トレーニングに関しては器具や施設なども必要ですし、運動に関する最先端の理論はもちろん、食事においても正しい情報が欠かせません。筋肉をつける、そして足腰を強化するという場として適していたり、ご自宅との往復もいい気分転換になるし、たとえばジムであればトレーナーさんと円滑にコミュニケーションが図れればメンタル的にも安定するでしょう。自律神経のバランスも整えやすくなります。つまり、良いジムに通うことで、さまざまな付加価値が得られるということになるのです。お近くのジムを検討されるといいと思います。

食事やメンタルのことまで考えると、手厚いサポートが必要です!

運動機能の低下に気づくための自己チェック
ロコモの可能性をお確かめください。

ロコチェック

出典:日本整形外科学会ロコモパンフレット2015年度版

病気のドミノ崩しは、肥満解消で止められる!

「最近、ちょっと太ったかも…」という経験は、おそらくどなたにもあるはずです。
でも「肥満」は、時には深刻なリスクに繋がります。まずは正しい知識を身につけておきましょう。総合内科専門医、そして糖尿病の専門医であり、『あおき内科 さいたま糖尿病クリニック』を開業されている青木厚院長に、糖尿病をはじめとする生活習慣病と肥満の関係について詳しいお話を伺いました。

あおき内科さいたま糖尿病クリニック

青木 厚 先生

青木 厚先生

日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本内分泌学会 内分泌代謝科(内科)専門医
日本糖尿病学会 専門医・研修指導医

健康と肥満と病気って、どんな関係?
まず、「肥満」について定義しましょう。 健康と肥満と病気って、どんな関係?まず、「肥満」について定義しましょう。

「肥満は病気なんですか?」という質問をよく受けます。結論から申し上げると、肥満自体は病気ではありません。医学的に肥満とは脂肪が過剰に蓄積した状態を指し、BMI(Body Mass Index.体格指数)の基準値は25以上のものを肥満と判定しています。
単に太っているだけでは病気ではありませんが、肥満により高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群や心不全、変形性関節症などをきたすと、“肥満症”と診断し、肥満そのものの治療つまり減量治療を最優先に行います。
太りすぎがカラダによくないとして、最近では健康への意識も高くなり始めていますが、社会情勢の変化による肥満傾向は今も続いています。
肥満の原因は明確にはされていませんが、人は生きるために食べたものを脂肪というかたちで貯蓄します。この脂肪を蓄えすぎることが肥満に繋がります。

健康と肥満と病気って、どんな関係?まず、「肥満」について定義しましょう。

男性と女性では太り方が違う?
肥満には2つのタイプがあります。 男性と女性では太り方が違う?肥満には2つのタイプがあります。

肥満の原因には遺伝的要素によるものと、生活習慣によるものがあります。特に食べすぎや酒の飲みすぎ、運動不足、ストレス、喫煙などの生活習慣の乱れを原因とする場合には、カラダへの負担が大きく、生活習慣病のリスクを伴う肥満になります。女性より男性の方が多くみられることが特徴です。

また肥満には内臓周辺への脂肪蓄積が目立つ「内臓脂肪型肥満」と、皮膚と筋肉の間に脂肪蓄積が目立つ「皮下脂肪型肥満」の2つに分けることができます。内臓脂肪を分解する働きや抗動脈硬化作用を有する女性ホルモンの影響により、女性は「皮下脂肪肥満型」になることが多く、反対に男性は「内臓脂肪型肥満」になることがほとんどです。しかし、女性も閉経後は女性ホルモンが著しく不足するため、男性と同じ「内臓脂肪型肥満」になり、注意が必要となります。

男性と女性では太り方が違う?肥満には2つのタイプがあります。

実は、内臓脂肪型の肥満が生活習慣病につながりやすい!?

なぜ肥満が生活習慣病と関係しているのでしょうか? そして「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2つのタイプのうち、どちらのタイプが生活習慣病につながりやすいのでしょう?

内臓脂肪は、コレステロールや血糖値、血圧を上げるホルモンや血栓を作るホルモンなど、体に良くないホルモン“悪玉アディポサイトカイン“を分泌します。よって、「内臓脂肪」が高度に蓄積された肥満の場合には、より生活習慣病のリスクを伴います。

実は、内臓脂肪型の肥満が生活習慣病につながりやすい!?

肥満が原因の生活習慣病、
とりわけ深刻なのが糖尿病です。

生活習慣病の中でも特に糖尿病人口は増加傾向にあります。糖尿病は酷くなると日常生活に支障をきたし、生命の危機に直面します。特に肥満による2型糖尿病の方は、病気発症時において内臓の脂肪が蓄積した「内臓脂肪型肥満」かつ「高血糖」の症状があります。 「高血糖」は血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなった状態が慢性的に続くため、治療を続けていかないと、将来的にもっと大きな病態へと繋がります。

血糖値をコントロールする重要なホルモン「インスリン」はカラダの中でも大切な働きをしています。糖尿病になるとこの「インスリン」が十分に働かず、その効果が発揮できない状態(インスリン抵抗性)になっており、ブドウ糖は細胞の中へ取り込まれません。そのため、エネルギーとなって燃焼することができずに疲れやすく力を出すことすらできなくなります。

血管が傷つくことで、
リスクがつぎつぎとやってくる。 血管が傷つくことで、リスクがつぎつぎとやってくる。

血糖値が高いと、カラダにどんな影響があるのでしょう? 実は、血糖値が高いことで血管が傷ついてしまい、さらに危険な健康上のリスクへと繋がっていきます。

糖尿病の場合、血糖値の管理を怠ると糖尿病網膜症での失明や糖尿病腎症で透析治療が必要になります。さらに高血圧も合併することで、脳血管疾患や虚血性心疾患など命を脅かすような病態に繋がってしまうのです。

「メタボリックドミノ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 肥満を出発点にして、ドミノが崩れるように病気の連鎖が起こってしまう状態を「メタボリックドミノ」といいます。肥満から高血糖、高血圧、さらには糖尿病へと進み、さらにそこから次のステップである腎不全や心疾患を併発するという状態は、まさに病気のドミノ崩しです。

血管が傷つくことで、リスクがつぎつぎとやってくる。
様々な生活習慣病の原因

もし糖尿病になってしまったら、家計のリスクも高まっていきます。

では、糖尿病になってしまったときの生活はどのように変わるのでしょうか。まず一番大きな影響が、生計を圧迫する医療費と収入源です。糖尿病患者の医療費は、3割負担の方で毎月およそ1~2万円です。この金額が毎月生計を圧迫します。

また透析をするようになれば、費用はさらに嵩み、その上、生活範囲が狭まり、非常勤へと転職せざるを得ません。こうなってしまうとすでに遅く、戻すことは到底できないのです。

もし糖尿病になってしまったら、家計のリスクも高まっていきます。

糖尿病には、カロリー制限。
でも、なかなか数値改善できません。 糖尿病には、カロリー制限。でも、なかなか数値改善できません。

糖尿病の治療をしている患者さんには、在宅自己注射や経口薬によって治療をしますが、カロリー制限の食事コントロールを1年に1回指導します。カロリー制限は食品交換表を使用して計算が煩わしく日常に反映できないとして実践できていない人が圧倒的にいらっしゃるため、なかなか数値改善は難しく反対に太ってしまう症例もみられます。

アメリカの糖尿学会では、カロリー制限の食事療法で改善できない場合には、セカンドラインとして糖質制限でもよいと認められています。しかし、現在の日本の医療では、十分な保健指導ができず、生活習慣改善治療ができずに、「痩せてください」の一言の助言のみになりがちです。本来は栄養指導を頻繁に行い、運動指導についても行うべきですが、保険診療には限界があります。

糖尿病には、カロリー制限。でも、なかなか数値改善できません。

内臓脂肪型の肥満の改善は、
運動と食事、生活習慣の見直しから! 内臓脂肪型の肥満の改善は、運動と食事、生活習慣の見直しから!

糖尿病など生活習慣病の原因となる「内臓脂肪型肥満」を改善することが、将来の健康上のリスク軽減に繋がります。メタボリックドミノの出発点である「肥満」の時に、いかにそれを食い止めるか。それが、将来介護を必要としない健康寿命の延伸に繋がります。

長い間に蓄積され続けた生活習慣により、ついてしまった内臓脂肪を減らす方法としては、生活習慣の見直し、運動、食事コントロールしかありません。しかし、人の欲求は簡単には抑えきれないため、一人ではなかなかコントロールすることが難しいとされています。

そういう意味では、運動の仕方や食事の摂り方について適切な指導を行うと同時に、一人ひとりのカラダや健康数値に合わせたプログラムを用意できるのが、理想的な選択肢かもしれません。

もちろん、実際に取り組むのは、あなたです。まずは自分自身のカラダに向き合い、状態を把握して、今すぐできる行動から始めてみましょう。

内臓脂肪型の肥満の改善は、運動と食事、生活習慣の見直しから!
カラダ鍛えて、健康人生。いつまでも若々しく。

まずは、自分の生活習慣をチェックしてみましょう!
当てはまるものが多い人ほど
メタボリックシンドロームになりやすい生活習慣を送っています。

まずは、自分の生活習慣
チェックしてみましょう!

当てはまるものが多い人ほど
メタボリックシンドロームになりやすい
生活習慣を送っています。

まずは、自分の生活習慣をチェックしてみましょう!
まずは、自分の生活習慣をチェックしてみましょう!

「はい」と答えた項目が多いほど、
メタボリックシンドロームになりやすい
生活習慣を送っています。

出展:厚生労働省 あなたの生活習慣をチェックしよう!
(監修:財団法人 循環器病研究振興財団)より

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